

深野 康彦 ふかの やすひこ
マスメディアでひっぱりだこの人気FP。個人のお金回りに関する様々な啓蒙活動を行う。近著に『図解 金融機関にすすめられた商品の中身がわかる本』(講談社)。
団塊の世代の退職が始まって、セカンドライフの資産運用を考えなければならない人が増えています。豊かなセカンドライフを過ごすためには、どんな運用が有効なのでしょう。FP(ファイナンシャル・プランナー)の深野康彦さんにお話を伺いました。
(このインタビューは2007年5月8日に取材したものです。)
――セカンドライフの資産運用を考えなければならない人が増えています。上手な運用を行うためには、まず何を考えたらいいのでしょうか。
資産運用の発想を変えることが大切だと思います。現役時代は資産をふやすことを中心に考えればよく、いわば資産拡大型の運用が求められました。
これに対して、セカンドライフで求められるのは、資産を減らさない運用です。現役時代に準備した資金を取り崩して生活資金の補填に充てるのがリタイア後の一般の家計ですが、資金の減るスピードを遅らせる運用を心掛けることが大切だと思います。
――預貯金など、元本の安全性の高い商品を使って慎重な運用を行い、支出を切りつめることが大切だということでしょうか。
いいえ、違います。支出を減らせば、確かに資金は減りづらいでしょうが、それでは豊かなセカンドライフを送ることは難しいでしょう。せっかく現役時代に準備してきた資金です。その資金に働いてもらう発想があってもよいと思います。
もちろん、資金の全てを預貯金に預けるのも一つの方法ですが、それでは減るスピードを遅らせる効果は出にくいでしょう。しかし、投資商品を上手く組み合わせれば、その速度を鈍らせる効果が期待できます。
投資に目を向けるべきだと思う理由は、この他にも二つあります。一つは公的年金の制度改正の問題です。以前は物価(消費者物価指数)に連動して受給額が決まっていた公的年金ですが、今年度(2007年度)からは、いよいよマクロ経済スライド方式による影響が出てきました。これを簡単に説明すると、物価上昇率の1割しか年金額に反映させないという制度です。物の価格が上がるインフレになっても年金額は上がりづらくなったわけで、年金受給者はその対策を講じる必要があると思います。
もう一つは、これからの時代は資産運用による格差リスクが拡大する可能性が高いと思うからです。世界全体で景気の拡大基調が続いていますが、投資をしないことによる収益機会損失の可能性も意識した方がよいと思います。
――しかし、一般にはセカンドライフの資産運用では、投資商品との付き合いは控えめにした方がよいと聞きます。
こうした慎重派に共通する声として、セカンドライフの投資はリカバリー(価格回復)の時間が限られているという指摘があります。投資商品が値下がりしている時に売却せざるを得ない可能性が大きいというわけです。しかし、仮に60歳でリタイアしたとして、平均余命から見たセカンドライフの期間は20年を越えています。投資商品の価格は常に上下しますが、価格の上昇を待つのに十分な時間だと思います。
ただし、誤解してほしくないのですが、やみくもに投資を勧めるわけではありません。自分の取れるリスク許容度などを考えながら、適切な資産配分(ポートフォリオ)を考えることが大切です。
――どのようにして資産配分を考えればよいのでしょう。
リタイアを控えた人や60歳代の人なら、まず60歳代用・70歳代用・80歳代以降用の3つに分けて、それぞれの期間で使える資金を考えることから始めてみてはどうでしょうか。高齢になるほど資金を厚くしたいと思う人が多いようですが、実際に資金需要が大きいのは活動的な生活を送れる60歳代という人がほとんどです。将来へ過度な不安を持つのではなく、希望する生活スタイルを優先させればよいでしょう。
資金の配分が決まったら、次は商品を考えるステップです。60歳代用の資金は、預貯金や債券など元本の安全性の高いローリスクローリターンの商品に預けるのがセオリーです。運用できる期間が短いので、リスクをあまり取らない方が賢明です。
一方で、運用期間が十分にある70歳代用と80歳代以降用の資金は、投資に充てられる資金と考えればよいでしょう。運用期間をより長く取れる80歳代以降用の資金は、値上がり益を期待して株式や国内株式型投資信託などのハイリスクハイリターンの商品に、70歳代用の資金はミドルリスクミドルリターンの商品を候補とすれば、資産配分の整理がしやすくなるかもしれません。

上記はあくまでもポートフォリオの一例であり、保有資産の状況や許容リスク等を勘案のうえ、ご自身でご判断ください。
――ミドルリスクミドルリターンの投資商品としては何が有望ですか。
私が注目しているのが、定期決算型の投資信託です。これは定期的に決算が行われ、運用成果の一部をその都度分配金として受け取れる仕組みです。定期的に現金収入を得られることで、セカンドライフ資金全体の減るスピードを緩める効果が期待できます。
――どういうことでしょう。
受け取った分配金を60歳代の収入と考えて、生活資金として使うことができるということです。60歳代の収入がふえれば、70歳代用の資金を使う時期を遅らせることができます。60歳代用の資金がなくなったら、この定期決算型の投資信託を徐々に売却していけばよいのですが、売却時期が遅くなるほどゆとりのある資金計画を立てられるというわけです。
一般に定期決算型の投資信託は税金などの点で投資効果に課題があると言われていますが、現金収入が不足しがちなセカンドライフでは、使い勝手の高い商品だと思います。ただし、運用状況によっては、分配金の額が減ったり、価格(基準価額)が下がる可能性があることは十分に理解しておく必要があります。
――定期分配型の投資信託と上手に付き合うためのポイントを教えてください。
二つあります。一つめは分配金の受け取り回数を考えることです。定期分配型の投資信託には、毎月決算を行う毎月決算型の他にも、隔月決算型や年4回型などもあります。分配金を毎月受け取れる毎月決算型が人気ですが、その分配金を貯めて季節の旅行費用に充てる人も多いようです。しかし、こうした人なら年4回型を選ぶのも一つの選択です。分配金の使途を明確にしてそれに即したタイプを選ぶことが大切で、それによって生活のリズム感を高めることができます。
二つめは運用の中身を自分で理解することです。ひとくちに定期分配型の投資信託と言っても、その種類は多様で運用対象も異なります。大まかに言うと、
(1)海外の債券で運用する外国債券型
(2)国内外の株式で運用する株式型
(3)不動産商品で運用するREIT(不動産投資信託)型
(4)外国債券、株式、REITを組み合わせて運用するバランス型
――に分けられますが、タイプによって分配金の水準や価格変動の大きさは異なります。
リスクとリターンの関係は表裏一体なので、一般に高い分配金を得られるタイプほど大きなリスクを取ることになります。分配金の多寡にだけ目を奪われるのではなく、自分が理解できる投資対象で運用されているタイプと付き合うことが大切だと思います。








